工場の移転新築の進め方

目次

「今の工場では新しい設備が入らない」
「生産拠点を一つにまとめたい」
といった理由から、別の土地へ工場を移転して新築する企業もあります。移転して新築すると今の敷地の制約から離れて理想の工場を計画できます。その一方で、土地選びや各種手続き、移転中の生産をどう確保するかなど、検討すべきことが多くあります。

このページでは、工場を移転して新築する際の進め方、移転先の土地選び、必要な手続き、税制や奨励金、生産を止めずに移転するためのポイントを解説します。

工場を移転して新築する主な理由

工場の移転新築を検討するきっかけには、次のようなものがあります。

  • 生産量の拡大に対して、今の敷地や建物では手狭になった
  • 新しい設備を導入したいが、天井高や床面積が足りない
  • 複数の工場・拠点を一か所に集約して効率化したい
  • 工場の周辺に住宅が増え、騒音・振動・交通量などへの配慮が難しくなった
  • 建物の老朽化が進み、同じ場所で建て替えるより移転したほうが合理的と判断した
  • 人材を確保しやすい地域や、物流の便が良い場所へ移りたい

経済産業省の「工場立地動向調査」によると、2025年の全国の工場立地件数は736件、立地面積は1,196haでした。新しい工場用地を求める動きは、毎年一定数あることがわかります。

建て替え・増築との違い

工場の課題を解決する方法には、移転新築のほかに、今の敷地での建て替えや増築もあります。

方法 メリット 注意点
移転新築 敷地の制約がなく、レイアウトや規模を一から計画できる。新工場の完成まで旧工場で生産を続けられる 土地の取得費や設備の移設費がかかる。従業員の通勤や取引先との距離が変わる
建て替え 今の立地や取引関係をそのまま活かせる 工事中の生産をどう確保するかが課題。現行の法規制で同じ規模が建てられない場合がある
増築 既存の工場を活かして、比較的短期間・低コストで床面積を増やせる 敷地に余裕が必要。動線が複雑になりやすい

今の敷地で解決できない課題があるかどうかが、移転を選ぶかどうかの大きな判断基準になります。

工場の移転新築の進め方

工場の移転新築は、一般的に以下のような流れで進みます。

  1. 移転の目的と新工場に必要な条件(規模・設備・立地)の整理
  2. 移転先の土地探しと法規制の確認
  3. 自治体への相談(企業立地の支援制度・各種手続き)
  4. 土地の取得
  5. 設計会社・施工会社の選定と基本計画の作成
  6. 開発許可・確認申請・各種届出
  7. 新工場の建設
  8. 設備の移設・試運転・新工場での操業開始
  9. 旧工場の退去・売却や跡地活用

移転新築では、新工場の建設と並行して、旧工場の生産計画、従業員への説明、取引先への連絡なども進める必要があります。「いつまでに新工場を稼働させるか」から逆算して計画を立てることが大切です。

移転先の土地選びで確認したいこと

用途地域で工場を建てられるか

工場は、どの土地にも建てられるわけではありません。都市計画で定められた用途地域によって、建てられる建物の種類が決まっています。工場を建てやすいのは、主に次の3つの用途地域です。

用途地域 工場に関する主な特徴
工業専用地域 工場のための地域。どのような工場でも建てられるが、住宅・店舗・学校・病院などは建てられない
工業地域 どのような工場でも建てられる。住宅や店舗も建てられるが、学校・病院・ホテルなどは建てられない
準工業地域 主に軽工業の工場などのための地域。危険性や環境悪化が大きい工場以外は、ほとんど建てられる

このほかの用途地域でも、規模や業種によっては工場を建てられる場合があります。ただし、騒音や振動を伴う業種や大規模な工場は制限を受けやすいため、候補地が決まったら早めに自治体へ確認しましょう。

市街化調整区域や農地は手続きに時間がかかる

市街化調整区域は、市街化を抑制する区域です。開発行為は原則として抑えられており、工場を建てるには都市計画法で定められた一定の条件を満たし、開発許可を受ける必要があります。また、農地に工場を建てる場合は農地法に基づく転用の許可や届出が必要です。市街化区域外の優良な農地などは、原則として転用が認められません。

土地の価格が安く見えても、手続きに時間がかかったり、そもそも工場を建てられなかったりする場合があります。土地を購入する前に、建てられるかどうかを必ず確認しましょう。

工業団地を活用する

自治体などが整備した工業団地は、工場を建てることを前提に造成されているため、用途地域やインフラの面で計画を進めやすいのが特徴です。自治体によっては、工業団地への立地に合わせて奨励金などの支援制度を用意しています。空き区画の状況は、自治体の企業立地担当窓口で確認できます。

物流・人材・災害リスク

  • 高速道路のインターチェンジや幹線道路までの距離
  • 大型トラックの出入りや敷地内の旋回スペース
  • 今の従業員が通勤できる距離か、新たな人材を確保しやすい地域か
  • 取引先・協力会社との距離
  • 浸水・土砂災害・地震などの災害リスク(ハザードマップ)

特に従業員の通勤は、移転後の人材確保に直結します。今の従業員が働き続けられるかどうかも、候補地を比べる重要なポイントです。

工場の移転新築で必要な主な手続き

手続き 主な内容
開発許可(都市計画法) 一定規模以上の開発行為を行う場合に必要。市街化区域では1,000㎡以上、市街化調整区域では規模にかかわらず必要(自治体により基準が異なる場合あり)
農地転用(農地法) 農地を工場用地にする場合に必要。市街化区域内は農業委員会への届出、それ以外は許可が必要
工場立地法の届出 敷地面積9,000㎡以上または建築面積3,000㎡以上の製造業等の工場(特定工場)が対象。原則として着工の90日前までに届出
騒音規制法・振動規制法の届出 指定地域内で特定施設を設置する場合、工事着手の30日前までに届出
建築確認申請(建築基準法) 工場の建築工事に着手する前に必要

必要な手続きは、移転先の立地や工場の規模・業種によって異なります。届出の期限から逆算すると、着工の数か月前には手続きを始める必要があるため、土地の検討段階から施工会社や自治体に相談するのがおすすめです。

移転時に確認したい税制・奨励金

旧工場の土地を売却する場合の「買換え特例」

法人が長く所有してきた土地・建物などを売却し、新たな土地・建物などを取得する場合、一定の要件を満たせば「特定の資産の買換えの場合の課税の特例」を受けられる可能性があります。売却益に対する課税を繰り延べられる制度で、所有期間10年超の国内の土地・建物などから、国内の一定の土地・建物などへの買換えが対象の一つです。

2029年(令和11年)3月31日までの譲渡が対象で、事前の届出なども必要です。適用できるかどうかは、税理士などの専門家に確認しましょう。

自治体の企業立地奨励金

多くの自治体は、工場の新設や移転を支援する奨励金・補助金を設けています。たとえば埼玉県所沢市の「企業立地支援奨励金」は、市内事業者が市内の別の敷地へ移転する場合も、既存の事業規模を縮小しないことなどを条件に対象としています。取得した土地・建物などの固定資産税・都市計画税の相当額を、3年間交付する制度です。

こうした制度は、土地の取得や着工の前に申請が必要なケースが多い点に注意が必要です。

生産を止めずに工場を移転するポイント

新工場の稼働まで旧工場で生産を続ける

移転新築の大きなメリットは、新工場が完成するまで旧工場で生産を続けられることです。新工場で試運転を行い、安定稼働を確認してから旧工場の生産を止めることで、生産の空白期間を最小限に抑えられます。

設備は段階的に移設する

すべての設備を一度に移すと、移設期間中は生産が止まってしまいます。新しく導入する設備から新工場で稼働させ、既存設備はラインごとに順番に移設するなど、段階的に移す計画を立てましょう。製品の在庫を事前に積み増しておくことも、移設期間中の供給を守る対策になります。

退去期限や稼働開始日から逆算する

旧工場が賃貸で退去日が決まっている場合や、取引先への供給開始日が決まっている場合は、新工場の完成時期がずれると事業に大きな影響が出ます。工期の見通しが立てやすく、短期間で建てられる工法を選ぶことも、移転を成功させるポイントです。

移転新築にシステム建築が向いている理由

システム建築は、建物を構成する部材を標準化し、設計から部材の生産までをシステム化した建築工法です。移転新築との相性が良い理由として、次の点が挙げられます。

  • 工期が短い:部材を工場で生産し、現場では組み立てが中心になるため、工期を短縮しやすい。
  • 柱のない大空間をつくりやすい:新工場で生産ラインを一から組み直す際に、レイアウトの自由度が高い
  • 費用感をつかみやすい:標準化された部材を使うため、計画段階で費用の目安を把握しやすい。

まとめ:工場の移転新築は「土地選び」と「スケジュール」がカギ

工場を移転して新築すると、今の敷地の制約を受けずに、生産性の高い工場を一から計画できます。一方で、移転先の用途地域や開発許可・農地転用などの手続き、税制や奨励金の確認、設備の移設計画など、検討すべきことは多岐にわたります。

移転を成功させるには、新工場の稼働開始日から逆算してスケジュールを組むことが重要です。工期の見通しを立てやすく、柱のない大空間をつくりやすいシステム建築も、選択肢の一つとして比較してみてはいかがでしょうか。

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システム建築での工場建設では、レイアウト設計が作業効率や運営に大きな影響を与えます。
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日鉄エンジニアリングのHPキャプチャ画像
引用元:日鉄エンジニアリング公式HP(https://www.eng-steelstructures.com/sp/case/factory/case_19/)

複数の製造ラインが分岐・合流・交差するレイアウト設計や振動・騒音対策など設備条件に応じた間取りに対応。
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具体的にはこんな工場に対応
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移動や保管が必要な工場なら
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横河ブリッジシステム建築のHPキャプチャ画像
引用元:横河ブリッジシステム建築公式HP(https://www.yokogawa-yess.co.jp/archives/production/7819)

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大和リースのHPキャプチャ画像
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具体的にはこんな工場に対応
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