クリーンルームを備えた工場の建設を検討している会社・担当者に向けて、知っておきたいポイントを解説します。清浄度の要求は、空調設備だけでなく建屋の階高・床・気密性能にまで及びます。業種を問わず共通する建屋側の条件を整理し、システム建築による施工例もあわせて紹介します。
清浄度クラスは工程の要求から決まり、クラスが上がるほど建設費とランニングコストが増えます。クリーンルームの清浄度は国際規格 ISO 14644-1 と、これに整合する JIS B 9920 で区分されており、クラスを示す数字が小さいほど、許容される粒子が少ない環境を意味します。まず「どの工程に、どの清浄度が必要か」を確定させることが計画の出発点になります。
あわせて、クリーンルームの運用は4つの原則で整理されています。汚染を「持ち込まない」「発生させない」「堆積させない」「排除する」の4点で、更衣室やエアシャワーの配置、清掃しやすい仕上げ、換気回数の設定といった設計判断はすべてこの原則に紐づきます。
気流の方式は大きく2つに分かれます。一方向流は、天井全面のフィルタから床面へ空気を層状に流す方式で、床下から吸気するためのグレーチング床などの設備を必要とし、設備費もランニングコストも高くなります。もう一方の非一方向流(乱流)は、天井に配置したフィルタ付き送風ユニットから清浄な空気を供給して室内の空気を希釈する方式です。コストを抑えられる反面、気流が滞留する死角ができやすいため、吹出口と吸込口の位置関係を検討する必要があります。一方向流のほうが高い清浄度に対応できるため、必要な範囲を絞って適用するという考え方が取られます。
クリーンルームは、建屋の階高と床を先に決めます。あとから清浄度を引き上げようとしても、躯体が対応できないことがあるためです。天井にフィルタを敷き詰める方式では天井裏にチャンバーの空間が要り、床下から吸気する方式ではさらに床下の空間が加わります。結果として、同じ天井高を確保するにも一般的な工場より階高を大きく取る必要が生じます。
床については、装置の据付に必要な耐荷重と平滑度に加えて、帯電防止の仕上げが求められる場合があります。一方向流を採用するならグレーチング床とそれを支える架構が必要になり、床の構成そのものが変わります。
外皮に求められるのは気密性能です。室内を周囲より高い圧力に保って外部からの流入を防ぐ差圧管理を行うため、開口部の納まりやシールの計画が清浄度の維持を左右します。
建設費についても、面積だけでは決まりません。必要な清浄度、空調方式、温湿度条件、天井高、床仕様、設備密度といった条件の組み合わせで変動します。予算を検討する段階では、面積よりも先にこれらの条件を固めておくことが必要です。
建屋の全面をクリーンルームにする以外の選択肢もあります。清浄度が必要な工程だけをブースで囲う局所クリーン化であれば、対象範囲を絞ることで空調負荷と維持管理の手間を抑えられます。ファクトリーブースや簡易的なクリーンルームは、この考え方に沿った設備です。
また、既存建屋の内装を改修してクリーンルームを設ける方法が取れる場合もあります。新築するか、既存の建物を活かすかは、必要な階高と床仕様を既存躯体が満たせるかどうかで判断が分かれます。
将来の増設まで視野に入れるなら、柱の位置と梁の高さを要件に合わせて調整できる架構が計画の幅を広げます。規格化された部材で建てるシステム建築は、無柱の大空間を確保しやすく、ブースの増設やレイアウト変更にも対応しやすい工法です。清浄度を求める範囲が将来的に広がる可能性があるなら、あらかじめ余白を残した架構を検討しておくとよいでしょう。
長崎県東彼杵郡に建てられた液晶フィルムの生産施設。日鉄エンジニアリングのシステム建築「スタンパッケージ」を採用した事例で、2005年11月に竣工しています。同社は基礎構造と鉄骨を自社で開発しており、建物の大きさ・高さ・柱間隔を要望に合わせて設計できる点を特徴として挙げています。
液晶・半導体の関連装置を製造する会社の工場で、2018年4月に竣工しました。建物は幅34.2m、長さ42.9m、高さ13.1mのシステム建築。主要スペースは無柱スパン27.0m、長さ39.6mのクリーンルームで、10t天井走行クレーン2基と20t天井クレーン1基が設置されています。クリーンルームと大型クレーンを同じ空間に納めた構成です。
2019年2月に竣工した新本社工場。幅35.4m、奥行18.0m、高さ8.3mの室内無柱構造で、屋内は主に事務所・クリーンルーム工場・倉庫スペースで構成されています。事務・生産・保管という性格の異なる用途を、柱のない一体の空間の中で仕切って配置した事例です。
2018年11月に竣工した2階建ての工場棟。幅15.0m、奥行21.6m、高さ8.2mで、2階は室内無柱構造としています。工場内はクリーンルームと同様の仕様で、各作業用の部屋に間仕切りされています。小規模でありながら、工程ごとに部屋を分ける構成を取った事例です。
清浄度に関する建屋側の条件は業種を問わず共通しますが、そこに上乗せされる要件は業種ごとに異なります。該当する業種のページもあわせてご確認ください。
当メディアは、工場建設を効率よく行いたいと考えている製造関連企業に向けて、工場建築に実績のあるシステム建築メーカーの情報を掲載しています。
つくりたい工場のレイアウト要件から探せるシステム建築メーカー3選を厳選して紹介していますので、システム建築メーカー選びの参考としてぜひご覧ください。
システム建築での工場建設では、レイアウト設計が作業効率や運営に大きな影響を与えます。
柱の位置調整や広さ、衛生区画など、工場特有の要件を満たすためには、設計対応力があり、柔軟な対応ができるメーカー選びが不可欠です。ここでは、特定のレイアウト要件に対応できるシステム建築メーカー3社を厳選し、各社の特徴と強みを詳しく解説します。
組み立て・加工が5工程以上の
複数の製造ラインが分岐・合流・交差するレイアウト設計や振動・騒音対策など設備条件に応じた間取りに対応。
自社開発の基礎・鉄骨を活用し、システム建築の費用感はそのままに加工工場が求める自由度の高い設計を実現。
長尺材や鉄骨の
クレーンやフォークリフトの動線を妨げず、鉄骨や長尺材などの加工・運搬をスムーズに行える。
最大60m級の無柱空間を実現する構造により、大型資材の保管スペースも十分に確保できる。
衛生基準を満たすための
食品・飲料などの製造環境に求められるゾーニングや空調設計、衛生区画の分離に対応。
設計段階からHACCP認証取得を見据えた仕様提案に加え、専門コンサルタントによる運営支援も受けられる。