これから造船所に関連する工場や施設を建設される会社・ご担当者さまに向けて、事前に知っておきたいポイントをまとめました。また、無柱大空間の確保やコストパフォーマンスに優れた建築方法「システム建築」による造船工場の施工事例も紹介しています。ぜひチェックしてみてください。
造船所の工場は他の一般的な工場とは異なり、船舶の巨大なブロックや重量物を製造・組み立てるための広大な作業スペースが必要です。そのため、柱のない大空間(大スパン)をいかに確保するかが重要な課題となります。
また、沿岸部に立地することが前提となるため、厳しい自然環境に耐えうる強固な構造が求められます。塩害対策をはじめ、台風などの強風に耐える外装材の選定、そして重量級の天井クレーンを設置するための頑強な骨組みなど、造船業界特有の事情を考慮した綿密な設計が不可欠です。近年では、これらの条件を比較的低コストかつ短納期でクリアできる「システム建築」を採用するケースが増えています。
造船所を建設する際は、沿岸部という特殊な立地環境に合わせた対策が必須です。
海からの潮風による塩害対策として、防錆効果の高い外装材や特殊コーティングの採用が不可欠です。また、沿岸部は地盤が軟弱なケースも少なくありません。巨大な建物本体と重量級の設備を支えるため、事前の地盤調査を徹底し、必要に応じて杭打ちや地盤改良といった地盤沈下対策を行う必要があります。
さらに、高波や津波などの自然災害リスクも想定し、設備や資材の配置場所を検討しておくことも重要になります。
使いやすい造船工場を設計するためには、巨大な部材をスムーズに搬入・搬出・組み立てるための動線確保が最優先されます。
作業効率を高めるためには、柱のない無柱大空間と、大型重機やブロックが出入りできる大開口(大型シャッターやスライディングドア)の設置が求められます。また、数トン〜数十トンクラスの天井走行クレーンを複数設置することが多いため、建物の骨組み(柱・梁)はそれに耐えうる高い強度を持たせなければなりません。工程ごとの部材の動きをシミュレーションし、無駄のない設備配置を練ることが必要です。
造船工場では、溶接作業や切断作業、塗装作業が日常的に行われます。そのため、溶接ヒューム(金属の煙)や粉塵、塗装によるニオイを排出する強力な換気設備が必須です。これらの設備が不十分だと、作業員の健康被害につながる懸念が生まれます。
また、金属を加工する際の激しい騒音が周辺環境に悪影響を与えないよう、防音・遮音性の高い壁材を使用するなど、近隣への配慮も忘れてはいけません。
建築設計で共通して求められる機能性は『風雨を防ぐこと』ですが、造船所にとくに求められるものは、巨大な空間をいかに効率的かつ安全に構築するかという点です。
システム建築は、あらかじめ規格化された部材を使用するため、短納期・低コストでありながら、数十メートルから百メートルを超える無柱大空間を実現できます。造船工場に必須となる大型クレーンの設置や超大型扉の導入にも柔軟に対応できるシステムを選定することが、生産率をあげるためのポイントです。
塩害や強風に常にさらされる造船所は、通常の建物以上に劣化が進みやすい環境にあります。
そのため、設計段階からメンテナンスのしやすさを考慮しておくことが重要です。工場稼働の停止時間を最小限に抑えるために、耐食性に優れた素材を選ぶのはもちろん、将来的な外装の点検やクレーンの整備がスムーズに行えるような設計にしておくことで、建物のライフサイクルコストを抑えることにつながります。
大分県佐伯市に建設された株式会社三浦造船所の新工場棟です。竣工時期は、2018年1月。長さ32.4m×奥行32.7mの無柱空間を実現し、4.8tの天井走行クレーンが設置されています。高さ4.0m×幅4.0mの大開口電動シャッターを備え、外壁には清潔感のあるエジプシャンホワイトが採用されています。
千葉県に建設された三井造船株式会社の造船工場です。建物幅108.0m、長さ32.0mという非常に大規模な空間をシステム建築によって実現しています。造船所特有の超大型ブロックや設備を扱うために大空間と大開口を確保し、効率的な作業環境を支える構造となっています。
造船事業を中核とする常石グループの技術を活かした造船関連工場の施工事例です。沿岸部特有の厳しい自然環境や塩害に耐えうる頑強な構造と、大型部材の製造・組み立てをスムーズに行える大空間を確保。長年の造船・建設ノウハウが詰め込まれた機能性の高い工場に仕上がっています。
当メディアは、工場建設を効率よく行いたいと考えている製造関連企業に向けて、工場建築に実績のあるシステム建築メーカーの情報を掲載しています。
つくりたい工場のレイアウト要件から探せるシステム建築メーカー3選を厳選して紹介していますので、システム建築メーカー選びの参考としてぜひご覧ください。
システム建築での工場建設では、レイアウト設計が作業効率や運営に大きな影響を与えます。
柱の位置調整や広さ、衛生区画など、工場特有の要件を満たすためには、設計対応力があり、柔軟な対応ができるメーカー選びが不可欠です。ここでは、特定のレイアウト要件に対応できるシステム建築メーカー3社を厳選し、各社の特徴と強みを詳しく解説します。
組み立て・加工が5工程以上の
複数の製造ラインが分岐・合流・交差するレイアウト設計や振動・騒音対策など設備条件に応じた間取りに対応。
自社開発の基礎・鉄骨を活用し、システム建築の費用感はそのままに加工工場が求める自由度の高い設計を実現。
長尺材や鉄骨の
クレーンやフォークリフトの動線を妨げず、鉄骨や長尺材などの加工・運搬をスムーズに行える。
最大60m級の無柱空間を実現する構造により、大型資材の保管スペースも十分に確保できる。
衛生基準を満たすための
食品・飲料などの製造環境に求められるゾーニングや空調設計、衛生区画の分離に対応。
設計段階からHACCP認証取得を見据えた仕様提案に加え、専門コンサルタントによる運営支援も受けられる。