平屋工場のメリット・デメリット

目次

工場を新築する際、「平屋にするか、2階建てにするか」は早い段階で決めておきたいポイントです。平屋の工場は、上下の移動がなく、生産ラインを一つのフロアにまとめられるため、製造業で多く採用されています。一方で、同じ床面積を確保するには広い敷地が必要になるなど、注意したい点もあります。

このページでは、平屋工場のメリット・デメリット、必要な敷地の考え方、2階建てとの比較、平屋工場に適した工法について解説します。システム建築で建てられた平屋工場の事例も紹介します。

平屋工場のメリット

上下移動がなく、動線をシンプルにできる

平屋の工場では、原材料の搬入から加工、検査、出荷までを同じフロアで完結できます。階段やエレベーター、垂直搬送機による上下の移動がないため、工程順に一直線のラインを組むなど、効率的な動線を計画しやすいのが大きなメリットです。フォークリフトや台車での搬送もスムーズになり、作業の安全性向上にもつながります。

重量のある設備を配置しやすい

工作機械やプレス機など重量のある設備は、2階に置くと床の強度や振動対策の面で構造上の制約が大きくなります。たとえば横河ブリッジシステム建築は、システム建築を2階建てにする場合、2階の床荷重に応じて構造のタイプを使い分けるとしています。平屋であれば、重量設備を地面に近い1階の床に設置できるため、設備配置の自由度を確保しやすいでしょう。

天井高や大空間を確保しやすい

平屋は上階がないため、建物全体の高さを天井高に充てられます。大型設備の設置や天井クレーンの導入、高さのある資材の保管など、高さを必要とする工場に向いています。また、柱の少ない大空間をつくれば、将来のレイアウト変更にも対応しやすくなります。

階数に関わる設備や規制の対象になりにくい

建物の階数が少ないことで、設備や法規制の面でも負担を抑えられる場合があります。

  • エレベーターを設置しない場合、本体の費用や毎年の定期検査報告が不要になる
  • 防火地域・準防火地域で、階数を条件とする耐火建築物などの規制には該当しない(面積による規制は残る)
  • 消防用設備のうち、「3階以上の階」などを条件とする基準は対象外になる

ただし、延べ面積による基準は平屋でも適用されます。必要な設備や規制は建物の規模・用途・立地によって異なるため、設計段階で確認しましょう。

将来の増築に対応しやすい

平屋の工場は、敷地に余裕を残しておけば、生産の拡大に合わせて横方向に棟を増やしていく計画も立てられます。上階に増築する場合と比べて、既存の建物の構造への影響を考えやすいのも利点です。

平屋工場のデメリット・注意点

広い敷地が必要になる

平屋の工場は、延床面積がほぼそのまま建築面積になります。そのため、2階建てと同じ床面積を確保しようとすると、より広い敷地が必要です。敷地に対して建てられる建築面積の割合(建ぺい率)は、用途地域ごとに次の値から都市計画で定められています。

用途地域 建ぺい率(都市計画で定められる値)
工業専用地域 30%・40%・50%・60%
工業地域 50%・60%
準工業地域 50%・60%・80%

たとえば、建ぺい率60%の土地に1,000㎡の平屋工場を建てる場合、必要な敷地面積は約1,667㎡以上(1,000㎡÷60%)です。実際には、駐車場や荷捌きスペース、トラックの通路なども必要になるため、建物以外のスペースも含めて敷地の広さを検討することが大切です。なお、特定行政庁が指定する角地や、防火地域内の耐火建築物などには建ぺい率の緩和があります。

屋根からの熱の影響を受けやすい

平屋の工場は、床面積に対して屋根の面積が大きくなります。屋根の断熱・遮熱性能が低いと、夏場の室温上昇や空調負荷の増加につながるため、屋根・外壁の断熱仕様は計画段階でしっかり検討しましょう。たとえば大和リースは、平屋の工場・倉庫向け商品のオプションとして、断熱材を挟んだ二重構造の屋根を用意し、室内温度の上昇を抑える効果があるとしています。

事務所や休憩室の配置を工夫する

平屋で事務所や休憩室、更衣室まで同じフロアに配置すると、生産スペースが圧迫されることがあります。その場合は、工場部分は平屋にして、事務所部分だけを2階にする「一部2階建て」という選択肢もあります。生産エリアの広さを確保しながら、管理部門の動線も整理できます。

平屋と2階建ての比較

比較項目 平屋 2階建て
必要な敷地 広い敷地が必要 同じ床面積なら敷地を抑えられる
動線 上下移動がなくシンプル 階をまたぐ搬送・移動が発生する
重量設備 1階の床に配置しやすい 2階に置く場合は床荷重・振動対策が必要
天井高 確保しやすい 各階の高さに制約がある
昇降設備 原則不要 階段のほか、荷物用エレベーターなどが必要になる場合がある
向いている工場 重量設備・大型設備を使う工場、一直線の生産ラインを組みたい工場 敷地が限られる工場、軽量な製品を扱う工場、事務所を併設したい工場

どちらが適しているかは、敷地の広さ、生産品目、設備の重さ、将来の拡張計画によって変わります。生産ラインと設備の配置から逆算して、必要な床面積と階数を決めるのがおすすめです。

平屋工場にシステム建築が向いている理由

システム建築は、建物を構成する部材を標準化し、設計から部材の生産までをシステム化した建築工法です。柱の少ない大空間をつくりやすく、平屋の工場・倉庫で多く採用されています。主なシステム建築の仕様は以下の通りです。

商品名(メーカー) 主な仕様(公式HPより)
yess建築(横河ブリッジシステム建築) スパンは無柱で最大60m。最高高さ20m(標準は12m以下)。天井クレーンは吊り荷重10tまでを標準(最大30t)
スタンパッケージ(日鉄エンジニアリング) 平屋または2階建てで、延床面積500㎡以上でメリットを発揮しやすい
ダイワスペース(大和リース) スパン12〜24mの5バリエーション。梁下5.0mまたは7.5m。ホイストクレーンは2.8tまで対応(オプション)

また、部材を工場で生産し、現場では組み立てが中心になるため、工期を短縮しやすいのも特徴です。大空間の平屋工場を短期間で建てたい場合に、有力な選択肢になります。

まとめ:平屋工場は「敷地」と「生産ライン」から判断する

平屋の工場は、上下移動のないシンプルな動線、重量設備の配置しやすさ、天井高や大空間の確保しやすさなど、製造業にとって多くのメリットがあります。一方で、広い敷地が必要になることや、屋根からの熱の影響を受けやすいことには注意が必要です。

敷地の広さと建ぺい率、生産ラインや設備の配置をもとに、平屋が適しているかを判断しましょう。柱の少ない大空間を短期間でつくりやすいシステム建築は、平屋工場を計画する際の有力な選択肢です。

CHECK
システム建築メーカーは
レイアウト要件から選ぶ!

当メディアは、工場建設を効率よく行いたいと考えている製造関連企業に向けて、工場建築に実績のあるシステム建築メーカーの情報を掲載しています。

つくりたい工場のレイアウト要件から探せるシステム建築メーカー3選を厳選して紹介していますので、システム建築メーカー選びの参考としてぜひご覧ください。

           
レイアウト要件から選ぶ、
システム建築メーカー3選

システム建築での工場建設では、レイアウト設計が作業効率や運営に大きな影響を与えます。
柱の位置調整や広さ、衛生区画など、工場特有の要件を満たすためには、設計対応力があり、柔軟な対応ができるメーカー選びが不可欠です。ここでは、特定のレイアウト要件に対応できるシステム建築メーカー3社を厳選し、各社の特徴と強みを詳しく解説します。

アイコン組み立て・加工が5工程以上の
製造ラインが必要な工場なら
日鉄エンジニアリング
日鉄エンジニアリングのHPキャプチャ画像
引用元:日鉄エンジニアリング公式HP(https://www.eng-steelstructures.com/sp/case/factory/case_19/)

複数の製造ラインが分岐・合流・交差するレイアウト設計や振動・騒音対策など設備条件に応じた間取りに対応。
自社開発の基礎・鉄骨を活用し、システム建築の費用感はそのままに加工工場が求める自由度の高い設計を実現。

具体的にはこんな工場に対応
  • 自動車部品製造工場
  • 精密機械加工工場
アイコン長尺材や鉄骨の
移動や保管が必要な工場なら
横河ブリッジシステム建築
横河ブリッジシステム建築のHPキャプチャ画像
引用元:横河ブリッジシステム建築公式HP(https://www.yokogawa-yess.co.jp/archives/production/7819)

クレーンやフォークリフトの動線を妨げず、鉄骨や長尺材などの加工・運搬をスムーズに行える。
最大60m級の無柱空間を実現する構造により、大型資材の保管スペースも十分に確保できる。

具体的にはこんな工場に対応
  • 建築資材工場
  • 鉄骨加工工場
アイコン衛生基準を満たすための
ゾーニングが必要な工場なら
大和リース
大和リースのHPキャプチャ画像
引用元:大和リース公式HP(https://www.daiwalease.co.jp/works/prefab/25151)

食品・飲料などの製造環境に求められるゾーニングや空調設計、衛生区画の分離に対応。
設計段階からHACCP認証取得を見据えた仕様提案に加え、専門コンサルタントによる運営支援も受けられる。

具体的にはこんな工場に対応
  • 食品関連工場
  • 飲料製造工場

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