システム建築Online 特集『システム建築』最前線

福祉施設

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介護や更生サービスを提供する施設として、福祉施設があります。高齢化が進む現在、福祉施設の需要は増加傾向に。新たな施設の建設を考える企業は多いのですが、建設前に施設の種類や基準などを把握する必要があります。ここでは寿命や価格などのポイントを踏まえ、福祉施設の建設に向いている建築方法を比較しました。利用者の安全や暮らしやすさに配慮した建物を作りましょう。

福祉施設に最適な建築方法とは

建築方法の比較

システム建築 在来工法 プレハブ工法

寿命
30年以上 30年以上 20年以上

価格
在来工法の2/3程度 高い 小さい施設なら安価で建設可能

工期
2か月半~ 6か月~ 1か月~3か月

デザイン
シンプルで機能性を重視したデザイン
形状は選択幅が少ない
用途や好みによって素材・形状を選ぶことが可能 規格に合わせて組み立てる工法
デザインの自由度はあまり無い

耐久性
耐久性の高い素材を使用すれば災害・気候変動にも対応可能 自由に追求できる 外壁は耐久性が高いが、屋根材の耐久度が低い傾向がある

福祉施設は種類によってさまざまな福祉サービスを提供する必要があるため、機能性の高さや耐久性を重視した建設が求められます。鉄骨づくりの在来工法やシステム建築であれば、機能性や耐久性の基準を満たした建物を作ることが可能。ただし在来工法はコストや工期がかかります。なるべくコストを抑えて短工期で建てることを考えるなら、コストを半分以下に抑えられるシステム建築が最適です。

システム建築の福祉施設の特徴

システム建築は機能性の高さが必要な福祉施設にはぴったりの建築方法。建物内でのスムーズな移動や利用のしやすさなどは、システム建築の得意とするところです。また、システム化された工法により、安定した品質とコスト削減が実現できます。建築会社により得意とする形状や耐久性に違いがあるため、どのような施設を作るのかによって会社を選ぶのもいいでしょう。

メリット

寿命が長く耐久性も高められる

システム建築は寿命が長く耐久性を高められるのがメリットです。標準化された部材や工事により、安定した性能を保てます。工事を手掛ける人によって品質が左右されにくいので、安全性の面でも安心です。

デメリット

形状の選択肢が少ない

部材やユニットなどが標準化されているため、建物の形状の選択肢が少ない傾向にあります。見た目のデザイン性を重視した建物にしたい場合は、システム建築はあまり向いていないかもしれません。しかし、オーダー可能なシステム建築もあるため、気になる商品があった場合は問い合わせてみるのをおすすめします。

在来工法の福祉施設の特徴

福祉施設といっても、児童福祉や保護施設、活動支援センターといろいろな施設があります。それぞれに適したデザインで建築ができるのは在来工法でしょう。人が集まる場所のため、デザイン性を重視したいと考えている人は在来工法で建築してくれる会社がおすすめです。

メリット

デザインや耐久性に優れている

在来工法の魅力は、デザインや耐久性などを自由に設定できる点。それぞれに適した見た目や内装にしたい場合、在来工法の自由度の高さが必要になるでしょう。

デメリット

工期が長く価格が高い

自由に建物をデザインできる反面、費用や工期がかかるのが在来工法のデメリット。これから施設運営をして行かなければならないとなると、コストを抑えたい人も多いでしょう。

プレハブ工法の福祉施設の特徴

プレハブ工法は何より安さがいちばんの魅力。しかし、耐久性にはやや不安が残ります。強度や耐火性がシステム建築や在来工法に比べて低いと言われているため、安全性が重視される福祉施設の建設にはあまり向いていないかもしれません。しかし、近年のプレハブ工法にはさまざまな種類があるので、希望が叶う商品が見つかる可能性もあります。

メリット

安価に建築できる

小さな施設であれば、他の2つの工法に比べて安価に建築ができます。遮音性や断熱性といった過ごしやすさに着目したプレハブ工法の建築物もあるため、施設の規模や使用期間によってはお得に建てられるでしょう。

デメリット

耐久性に不安がある

コンクリート系や鉄骨系など、プレハブ工法にもいろいろあります。一般的に壁の耐久性は高いとされていますが屋根の耐久性は低いことが多いようです。

システム建築を使った福祉施設の施工事例

耐久性や機能性の高さに優れたシステム建築は福祉施設の建設に適していますが、実際の事例はどうなっているのでしょうか。建築システムを用いた福祉施設の事例を会社ごとに1事例ずつ紹介しています。3社の施工事例をピックアップしているので、建築システムの比較に役立ててください。

住金システム建築

住金システム建築_福祉施設施工事例
引用元:住金システム建築公式サイト(https://www.sumikin-sysken.co.jp/case/)

2階までの低層建築物に向いているシステム「トレオ」を用いて建設された福祉施設です。自由設計型の建築で、シンプルながらもデザイン性を重視した仕上がりが特徴。奥行きのあるつくりで、屋根や外壁には耐久性・機能性に優れた建材を使用しています。スロープや低い位置の手すりなど、誰でも不便なく使えるような工夫がされているのも魅力。

施工事例の概要

  • スパンの長さ(m):15.57
  • 桁行き長さ(m):25.43
  • 施工床面積(m2):790
  • 軒高(m):7.69
  • 屋根:要問合せ
  • 外壁:要問合せ

住金システム建築の公式サイトを見る

JFEシビル

JFEシビル_福祉施設施工事例
引用元:JFEシビル公式サイト(https://www.jfe-civil.com/system/metalbuilding/case/あったかハウスひだまり/)

デイサービス施設とグループホームが一緒になった建物で、凹型の構造になっています。耐熱・遮音性に優れた外壁と屋根システムで、利用者が快適に過ごせる設計が魅力。キッチンや洗面台の位置が低めなので、車いすの方も利用しやすいでしょう。

施工事例の概要

  • スパンの長さ(m):要問合せ
  • 桁行き長さ(m):要問合せ
  • 施工床面積(m2):1.143
  • 軒高(m):要問合せ
  • 屋根:Kルーフ
  • 外壁:KB205

JFEシビルの公式サイトを見る

内藤ハウス

内藤ハウス_福祉施設施工事例
内藤ハウス公式サイト(https://www.naitohouse.co.jp/case/神奈川県内医療施設143/)

医療福祉施設として建設された、フルオーダーのシステム建築「ハイデラックス」を用いた建物です。堅牢性に優れており、医療用福祉施設の基準を満たす十分な耐久度・耐熱性を備えています。外階段やフラット構造などが付帯した自由度の高いデザインながら、システム建築のメリットを活用した建物と言えます。

施工事例の概要

  • スパンの長さ(m):要問合せ
  • 桁行き長さ(m):要問合せ
  • 施工床面積(m2):626
  • 軒高(m):要問合せ
  • 屋根:要問合せ
  • 外壁:要問合せ

内藤ハウスの公式サイトを見る

福祉施設を建設する際のポイントとは?

福祉施設は「児童福祉施設等」と規定された特殊建造物で、建築時はさまざまな規定にのっとって設計する必要があります。福祉施設を建設するのであれば、福祉施設の建築基準や業態ごとの種類を把握しておきましょう。

業態ごとの福祉施設の種類

「児童福祉施設等」と規定される建物は、以下の11種に分類されます。

  • 児童福祉施設
  • 助産所
  • 身体障害者社会参加支援施設
  • 保護施設
  • 婦人保護施設
  • 老人福祉施設
  • 有料老人ホーム
  • 母子保健施設
  • 障害者支援施設
  • 地域活動支援センター
  • 福祉ホーム又は障害福祉サービス事業施設

この分類は業態によって細かく定義されており、デイサービスや更生施設などは適した種類の分類に分けられます。それぞれ関連する法律と定義をまとめているので、チェックしてみてください。

名称 関連法律 定義
児童福祉施設 児童福祉法第7条第1項 助産施設、乳児院、母子生活支援施設、保育所、幼保連携型認定こども園、児童厚生施設、児童養護施設、障害児入所施設、児童発達支援センター、情緒障害児短期治療施設、児童自立支援施設及び児童家庭支援センター
助産所 医療法第2条 (助産師が出産を手助けする施設)
身体障害者社会参加支援施設 身体障害者福祉法第5条第1項 身体障害者福祉センター、補装具製作施設、盲導犬訓練施設及び視聴覚障害者情報提供施設
保護施設 生活保護法第38条第1項 救護施設、更生施設、医療保護施設、授産施設、宿所提供施設
婦人保護施設 配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律第5条 (DVおよび暴力事件被害者の保護施設)
老人福祉施設 老人福祉法第5条の3 老人デイサービスセンター、老人短期入所施設、養護老人ホーム、特別養護老人ホーム、軽費老人ホーム、老人福祉センター及び老人介護支援センター
有料老人ホーム 老人福祉法第29条第1項 (老人の入居介護施設)
母子保健施設 母子保健法第23条障害者総合支援法第5条第11項 (母子保健法上の扱いは「母子保健センター」)
障害者支援施設 障害者総合支援法第5条第25項 (入所支援または入所なしの支援の2種類)
地域活動支援センター 障害者総合支援法第5条第26項 (障がいを持つ方が居住可能な施設)
福祉ホーム又は障害福祉サービス事業施設 障害者総合支援法第5条第1項 居宅介護、重度訪問介護、同行援護、行動援護、療養介護、生活介護、短期入所、重度障害者等包括支援、施設入所支援、自立訓練、就労移行支援、就労継続支援及び共同生活援助などを行なう施設

[注1][注2]

建物の種類によって基準が異なるため、分類に当てはまる福祉施設を建てるのであれば、関連する法律を把握しておきましょう。

2016年に改正された建築基準法によって、政令指定の定期報告対象建築物となった福祉施設もあります。中でもサービス付き高齢者住宅や認知症高齢者グループホームなどは特殊建造物ですが、児童福祉施設等に含まれないため建築基準や規定も違います。そのため、建設の際は注意が必要です。

「児童福祉施設等」の建築基準

一言で児童福祉施設等といっても、児童や老人、障がい者など、さまざまな方を対象にした建築物が含まれています。建築基準法で定められている「防火・避難関係の規定」では、建物の分類ごとに防火設備や内装制限、排煙設備などが義務付けられることから、施設利用者の安全に配慮したつくりにしなければいけません。

たとえば「児童福祉施設」の場合、柱・梁・壁の耐火構造はもちろん、防火設備の設置や耐火構造の有無まで厳しく見られます。非常時の避難手段である直通階段の設置、排煙設備、非常用照明まで定められているため、フルオーダーで1から建築するのは難しい建物だと言えるでしょう。

児童福祉施設や老人福祉施設などは用途によって業態も運営方法も異なるため、建築基準も違うもの。適した建築基準で建設できるよう、用途を確認したうえで建てましょう。

福祉施設建築で気を付けるべき法令

バリアフリー新法

高齢者や障がい者の自己実現や社会参加の促進を目的として、2006年に国会で可決・成立した法律です。

対象者が日常的に利用する福祉施設も、「建築物」として、バリアフリー化基準を満たすための努力義務が課せられます。

建築物移動等円滑化誘導基準

車いす利用者や視覚障がい者などの福祉施設利用者も移動しやすい設計が必要になります。

バリアフリー化については「努力義務」とされている部分がほとんどですが、最低限満たす必要があるのが、利用頻度の高い廊下、トイレ、エレベーターなどの広さや表示。とくに廊下は、1人通れるだけの広さではなく、2台の車いす同士がすれ違える幅が必要です。視覚障がいがあってもスムーズに移動できるように、点字などの設備も求められます。

この基準を満たす福祉施設を新築しようと考えている建築主に対しては、所管行政庁が計画を認定した後に支援措置が与えられます。建築条件の緩和や税制の特例、補助制度など、さまざまな支援措置があるので、それらの制度も活用しながら、利用者に寄り添った設計の福祉施設を建てるのが良いでしょう。

参照元