事務所は取引先との連絡や事務作業などを行う、工場や倉庫の管理にも欠かせない建物です。レイアウトをしっかり決めるには、変更や人員の増減も考えた建築をしなくてはいけません。そこで、寿命・価格・工期・デザイン・耐久性の5点から、事務所建設に利用される3つの建築方法を比較しました。
システム建築 | 在来工法 | プレハブ工法 | |
寿命 |
30年以上 | 30年以上 | 20年以上 |
価格 |
在来工法の2/3程度 | 高い | 小規模な事務所なら安価で建設可能 |
工期 |
2か月半~ | 6か月~ | 1か月~3か月 |
デザイン |
シンプルで機能性を重視したデザイン 形状は選択幅が少ない |
用途や好みによって素材・形状を選ぶことが可能 | 規格に合わせて組み立てる工法 デザインの自由度はあまり無い |
耐久性 |
耐久性の高い素材を使用すれば災害・気候変動にも対応可能 | 自由に追求できる | 外壁は耐久性が高いが、屋根材の耐久度が低い傾向がある |
システム建築やプレハブ建築は鉄骨づくりの在来工法に比べて低コストで短工期が実現できますが、デザインの幅は広くありません。しかし在来工法は素材や形状、耐久性の自由度が高い反面、コストが高くなる傾向にあります。長期的に使用することを考えると、安いコストで寿命が長い事務所を建てられる、耐久性に優れたシステム建築が最適でしょう。
システム建築は低コストでハイパフォーマンスなところが魅力です。事務所の建築に費用をあまりかけられない・かけたくないと考えているなら、ピッタリの方法でしょう。しかしながら、在来工法より自由度が低いため見た目を重視した建物にしたい場合には、適していないかもしれません。
システム建築のメリットは在来工法に負けない寿命の長さにあります。そのうえ、工期が短く済むためコスト削減も可能です。部材が標準化されているため、価格が安く抑えられるのに加え、工期短縮により人件費も抑えられます。建材によっては、高い耐久性を実現することもでき、コスパよく品質の高い建築ができるのが魅力です。
システム建築は、柱や梁といった部材が標準化されています。そのため、デザインの自由度はある程度制限されているのが一般的です。ですが、建築ユニットや建材の組み合わせ方により、機能性を重視したデザインにすることは可能。見た目の良さの追求は難しいところですが、過ごしやすい・働きやすい環境を重視した建築ができます。
在来工法は自由度に比例して、工期や費用がかかります。企業の事務所としてデザイン性や耐久性を追求しなければならないケースを除いて、コストに見合う建造物になるのかの見極めが大事です。譲れないデザインや性能があるのなら、在来工法が合っています。一般的な在来工法の寿命は約30年です。それを踏まえてコスパが良いかもチェックすると良いでしょう。
在来工法は部材や建材、耐久性などの自由度が高いのがメリットです。建物の外観・内装などを思っているとおりに造ってもらえます。デザイン性の高い事務所を構えたい場合は、在来工法を手掛けている建築会社に頼むと良いでしょう。
自由度が高い建物は、部材の素材や準備などで費用と時間がかかります。たとえば、オーダーメイドの部材や建具などを使用する場合、それらを製作するためのコストが必要です。また、目安として半年以上の工期をみておく必要もあります。
プレハブ工法はスピーディーに安価で建てられます。しかし、耐久性は他の2つの工法に比べてどうしても劣ってしまうため、短期間使用する事務所に向いています。長期間の使用を予定しているのであれば、建材や工法を工夫して耐久性を高めるようにしておきましょう。
工場で部材を用意し現地で組み立てるプレハブ工法は、工期の短さが魅力。規模によりますが、小規模の建物なら比較的安価に建てられるのもポイントです。
プレハブ工法の建物は、屋根の耐久性に不安があります。強風などで煽られて屋根が飛んでしまったという話を見聞きしたこともあるのではないでしょうか。
ここではシステム建築で建てられた事務所の施工事例を3つご紹介。1社につき1つの事例をまとめています。事務所の建設イメージをつかみたい方は、事例をチェックしておきましょう。
上層階を支える形で3階建てを実現
高層階に対応できるシステム建築「ラフィット」で建てられた事務所です。スパンが約20m、桁行が30mと、やや奥行きのある構造になっています。耐火性能に優れた外壁を使用した、耐熱性の高いつくりが特徴です。軒先が大きく突き出た設計になっており、2階より上の階層をしっかり支えられるように工夫されています。
施工事例の概要
予算や用途に応じてタイプの選択ができ、在来工法比で最大で25%のコスト縮減や納期の短縮が可能です。3階~6階程の中低層階ビルとしての建築に適しており、高耐震性、高断熱性、高水密性であることは言うまでもありません。防錆処理を施した鋼製地中梁と耐圧盤が緊結される直接基礎も耐久性の向上に寄与しています。
「技術先進性を常に追求し続ける」「システム建築の分野において、最もお客様から期待・信頼される会社になる」をモットーに掲げている日鉄物産システム建築。お客様にとって魅力的な商品の開発・提供や、信頼・期待に応えられる評価基準を心掛けています。
また、商品開発力と社員総合力、協力会社連携力を3つの柱として掲げ、これらのバランスを取りながら磨いていくことにより、企業としての成長を図っているそう。実際に口コミを調査してみましたが、満足度が高いと評価する声が多く見られました。
柱のないスペースの確保で配置しやすい設計に
横河システム建築が得意とする、できるだけ柱を使わない平屋づくりの事務所です。広々とした空間を確保しながら、ワンフロア・規格的な設計に仕上げることで、システム建築の良さである低コストなオフィスを実現しました。仕切りがないため、人数や設備に応じた自由なレイアウトを可能にしている点もポイントです。
施工事例の概要
柱を使わないシンプルな造りにすることで、工期やコストを抑えたシステム建築が可能なのが横河システム建築の魅力。また、事務所といっても中低層階構造での建築ができ、化粧パネルの使用などによって意匠性にもこだわれます。事務所のみならず、倉庫や駐車場併用型にすることも可能なので、作業を伴う事業を行っている場合は相談してみてください。
システム建築をコア事業とする横河システム建築は、事業開始以来、全国に約9,200棟の施工実績を持っています。全国約1,100社を超えるビルダー通して提供するyess建築は、横河システム建築が開発を手掛けたもの。お客様の要望にあわせて「良質で低コスト・短納期を実現した商品」としても有名です。
公式HPでは施工実績をはじめ、カラーシミュレーションやビルダー一覧の表示、参考価格の算出まで行えます。施設の建築を考えている人にとって、具体的なイメージを膨らませるのにも役立つでしょう。
口コミは見つかりませんでした。
事務所用途に特化した小さな規格構造を用意
工場の敷地内に建設された、費用をなるべく抑えられる「スペースMAX」で設計されている事務所です。建材の寸法が細かく規格化されており、実用性を重視したつくりが特徴。小さな建物ですが、建材やフレームにこだわっていて意匠性や断熱性能が保持されているのが魅力です。事務所だけに特化した桁行きや面積の小さい構造で、省スペースに優れています。
施工事例の概要
業種や立地によっては、コアシス建築のシステム建築、Core-Sys建築を選択することが最適かもしれません。倉庫業のように大きく作業スペースを確保する必要のある場合や、冬季の積雪対策を恒常的に施す必要があったり、また塩害地域といった要件がある場合は、無柱スペースとして確保できる60メートルの屋内スペースや、亜鉛メッキの柱や梁、ガリバリウム鋼板の屋根などを個別のカスタマイズで設置できることは優位性の一つです。
コアシス建築は、一定の範囲内で自由設計ができる会社です。在来鉄骨建築も自由設計が可能ですが、こちらは在来鉄骨建築よりも短期間・低コストで理想の事務所が手に入ります。建物サイズは1mm単位で設計でき、柱スパンは最大60m。建設した施設の機能をより一層高める、先進的な商品を取り揃えているのも魅力です。
塗装と断熱の両方の効果を発揮する「コアシスコート」や、消費電力の削減ができる太陽光採光システム「ひまわり」などは、施設で働く人にも地球にも優しい商品といえるでしょう。
工場や倉庫の管理をするために欠かせない事務所。快適に働く環境を整えるには、設計時にレイアウトや働きやすさを考えておく必要があります。レイアウト設計やオフィス内の動線計画を考えたうえで、従業員が働きやすい環境を整えましょう。
快適な事務所を作り上げるために重視すべきは、レイアウト設計です。必要な機能スペースの位置取り、人が動くための経路確保などを考えなくては、働きにくい環境になるケースもあります。
レイアウト設計では、最初に機能スペースの位置取りとなるゾーニング計画に取り組むのが大切。各スペースの関係性を意識し、位置取りを考えていきます。ワークスペースや来客用スペースなど用途や利用者を具体的に想像した位置を決めることで、満足いくレイアウトを構成できるでしょう。接客のしやすさや快適な仕事環境のイメージを固める作業が、建設時の仕上がりに影響すると言っても過言ではありません。
希望するオフィスに仕上げるためにも、必要な機能スペースを決めておきましょう。リストアップしておくと依頼時に要望を出しやすくなるので、重要な機能スペースは事前にまとめておくことが大切です。
機能スペースのゾーニングを決めた後は、建物内の経路を計画していきましょう。人が動く際に通る動線を効率良く確保することで、ストレスなく作業できる環境を設計できます。通る経路を複雑化すると、効率性が下がりコミュニケーションロスを生みかねません。ただし、経路を単調にし過ぎても移動の際に衝突する危険性が増すため、注意が必要です。
動線計画を立てる際に押さえておくべき点は、袋小路のない動線・メイン動線の明示・動線の簡略化など。動きやすく簡単な動線にすることで、移動しやすい事務所レイアウトが出来上がります。万が一のトラブルに対応できるよう、2方向避難通路の確保や法規上の通路幅制限も考慮した動線計画にしておきましょう。
快適なオフィス環境を作るためには、レイアウトだけでなく従業員の負担も考えることも重要です。長時間ストレスを感じるような作業環境では、健康や知的生産性に悪影響を与える恐れがあります。全ての従業員が快適に働ける環境の構築を考えましょう。
また、従業員の多様性に配慮することも大切です。性別や国籍の違い、障がいの有無などさまざまな可能性が考えられますが、そういった多様性に関係なく、スムーズに業務が進められる環境が求められます。多様性が一般化してきている現在、従業員一人ひとりに対する利便性も考慮しなければいけません。オフィス環境を整備し、設備や環境を整えて、誰でも快適に過ごせる事務所を設計しましょう。
非常時の避難経路を確保するために、建築基準法では廊下(通路)の幅を定めています。
廊下を挟んで両側に部屋・扉がある場合には、1.6m以上の幅が必要に。片側のみの場合は少し条件が緩和され、1.2m以上となっています。
避難用の階段までの距離は、窓の有無や階数によって定められています。
窓のある部屋からの避難を想定した場合、建築基準法では14階以下で60m以内、15階以上で50m以内に避難口までたどり着く設計にしなければなりません。
窓のない部屋であれば条件はより厳しく、14階以下であれば40m以内、15階以上であれば30m以内と定められています。
火災の発生に備えた排煙設備が、床面積500m2ごとに必要です。そのほかにも、耐火・防火などの火災を防ぐための設備や機能を事務所に備えることも、建築基準法で定められています。
部屋をわけるための仕切りやパーテーションが天井まで届いている場合、「部屋」と見なされます。そのため消防法の対象となり、スプリンクラーや火災感知器の設置が必要に。消防署への届け出を怠ると違反になるので、注意してください。
自動車に関する部品やカー用品全般の販売・サービスを行う会社の営業所です。長さ29.7m・奥行14mという総2階建てのカスタムタイプを採用しています。1階・2階のどちらも室内無柱構造で、長手方向の鉄骨主柱間隔は8.1mとやや広めです。外壁にはVリブウォールを採用し、ブロンズとホワイトのツートンカラーにしています。落ち着いたシックなイメージです。
幅23.7m・奥行14.6mの総2階建て事業所。1階は農作物関連の作業場、2階は倉庫として利用されています。1階手前側には、幅6.1m・高さ2.8mのワイドな重量電動シャッターを設置。建物正面側には出寸法3.0mの庇を設け、作業効率を上げています。外壁にはサンドイッチパネルを使い、建物3方にはパラペットを採用。断熱性に優れ、外の気温に左右されない快適な環境を実現しています。
事務所棟と倉庫棟の2棟をyess建築で建てた、システム建築の事例。長さ22m・幅8.5mの室内無柱構造で、建物正面側外壁と側面化粧庇上に会社ロゴサインを入れています。外壁はVリブウォールを採用し、ホワイトにアクセントカラーのオレンジ色が映えるデザインに。屋根にはPXルーフを採用。温度変化に対応できるスライド機能を備えた、山止めビス工法のパネルです。
シルバー1色で統一されたシンプルな外観のオフィスは、無柱スパン14.2mの室内無柱構造を採用しています。全面に窓を設置することで、広々とした空間でも十分に自然光を取り入れられる設計。外壁は縦貼りのフラットヴァンド35Vを使用しています。表皮材にカラーガルバリウム鋼板を用いたサンドイッチパネルで、意匠性・断熱性能に優れているのが特徴です。
清潔感のあるダークブルーの外壁に、真っ白な会社ロゴが目を引く事務所です。長さ50.4m・奥行18mのカスタムタイプで、主柱間隔は広めの7.2mとしています。資材倉庫の大開口は幅5.3m・高さ4mの重量電動シャッターで、開口部には出寸法5.0mの大きな庇を設置。緩やかなパネルの折りが特徴のVリブウォールは、日射しの向きによって美しいラインの陰影が生まれます。