工場の建築方法であるシステム建築や在来工法、プレハブ工法の3種類をピックアップし、寿命・価格・工期・デザイン・耐久性の5点をもとに比較しました。メリット・デメリットを踏まえ、自社のニーズに合った建築方法を選びましょう。
システム建築 | 在来工法 | プレハブ工法 | |
寿命 |
30年以上 | 30年以上 | 20年以上 |
価格 |
在来工法の2/3程度 | 高い | 小さめの工場なら安価で建設可能 |
工期 |
2か月半~ | 6か月~ | 1か月~3か月 |
デザイン |
シンプルで機能性を重視したデザイン 形状は選択幅が少ない |
用途や好みによって素材・形状を選べる | 規格に合わせて組み立てる。 自由度はあまり無い |
耐久性 |
耐久性の高い素材を使用することで気候変動にも対応 | 自由に追求可能 | 外壁は耐久性が高いが、屋根材の耐久度が低い |
寿命や価格、工期などのポイントで比較した結果、長期的に運用できる工場を建てるならシステム建築が向いていることが分かります。どの工法でも20年以上の寿命が保証されていますが、コストと工期、耐久性などを比べてみると、システム建築が他の工法に比べて優れているようです。デザイン幅が少ないというデメリットはありますが、機能性を重視するのであれば問題なく運用できるでしょう。
システム建築は工場や倉庫の建築に向いた工法ですが、実際の建物はどうなっているのでしょうか。ここでは、システム建築で建設された工場の施工事例を紹介しています。実際の工場の様子を見て自社の工場イメージを固め、依頼のときに具体的な要望を出せるようにしましょう。
余計な柱を排除し、生産効率の向上を図る設計に
農産物の流通を行なっているタカムラ鶏園の工場例です。用途に合わせた生産性を高める設計を得意としているJFEビルのシステム建築。ここでも通路の確保や作業工程ごとのスペースの区切りへのこだわりが見られました。高い断熱性と導線の高さで社員の作業効率が高まり、光熱費や管理費用を抑える効果も。建築費用だけでなく、総合的に考えてもムダのないコスパの良い施設が完成しました。
施工事例の概要
JFEシビルの強みはシステム建築としてコストや工期を抑えられるメリットを得ながら、用途や環境に合わせた自由設計が叶えられる点。企業ごとに最適な導線や設備を把握し、作業効率の高まる設備を提案してくれます。取り扱う商品によって必要な作業や最適な環境が異なる工場の建設に最適でしょう。
「売れ筋商品の大量生産」や「業務拡大に応じた工場の拡大」など、あらゆるお客様の要望に応えてくれるJFEシビル。部材の標準化や「いちいち基礎工法」をはじめとした各種工法を駆使し、短工期の工場を建築してくれます。できるだけ早く工場を建てたい!という人にも最適です。
コストパフォーマンスも抜群で、部材の軽量化や数量そのものの削減により、工事にかかる費用を大幅カットしています。さらに断熱性にも優れており、光熱費などのランニングコスト削減にも期待できるでしょう。
広い面積に低コストで最低限の工場を設計
大きな機会や設備を必要とする野菜出荷加工センターの事例です。横河システム建築が得意とする、柱を極力減らした空間づくりで利便性の高い設計を可能にしました。室外の搬入作業エリア、室内には選果・梱包作業エリアを設置。野菜を分ける長いレーンも、無柱空間の実現によって設置できました。新しい機械の導入時にレイアウトが変更しやいのも魅力です。
施工事例の概要
最大無柱スパン60メートルを実現している横河システム建築のyessシステム建築。高張力材を使用することで、中間柱ありでも120メートルの大空間を確保できます。生産物の大小にもよりますが、工場にyessシステム建築を適用することで、各種マシンの配置にも制約が減ります。
横河システム建築のシステム建築は意匠性に優れているのがポイント。お客様の希望に応じて、規格寸法仕様の建物から自由度の高いオーダーメイド仕様の建物まで、柔軟に対応できる体制を整えています。自社開発した構造解析ソフト(Scapy3D)でフレーム断面を算出し、超高層ビルなどで使用する高張力材を採用することで、最大無柱スパン60m、中間柱有りでは最大120mの大空間が実現可能です。
また、屋根パネルやYマットは、折板や結露防止用裏貼り材の費用とほぼ同じくらいの低コストで、ALC100mmの倍ほどの高い断熱性能を発揮してくれます。
口コミは見つかりませんでした。
高気密・高断熱工法で社員の快適な作業現場を確保
日鉄物産システム建築のオプションプランで建てた工場で、気候に合わせた高水密・高断熱工法を用いています。積雪にも耐えられる強度はもちろん、作業環境にも配慮した十分なスペースを確保した建物です。外壁には金属製のサンドイッチパネルを利用しており、ガルバリウム鋼板と充填剤を組み合わせた機能性の高い建築となっています。
施工事例の概要
環境に優しいシステム建築製品を展開している日鉄物産システム建築は、建設時に発生する掘削土量やCOを30%も削減しています。昨今では低コスト短納期が設備投資の必要要件ですが、環境配慮も含めて考慮すると、サスティナブルな事業展開の基礎として最適な設備投資にできそうです。
日鉄物産システム建築では部材を標準化し、生産プロセスがシステム化しているため、工場建築の場合は従来工法と比較して25%程度のコスト削減を可能です。標準化されたパッケージなので、概算費用の算出にかかる時間も、従来工法より大幅に短縮されています。
建築方法については平屋の工場は「ティオ」、平屋もしくは2階建ては「トレオ」を選択できるそう。ティオの場合はWEB見積もりが可能で、複数の項目を入力するだけで概算の見積を算出できます。手軽にできるので、まずは気になる費用だけ確認してみるのもいいでしょう。
自由度の高いレイアウト設計ができる「ラピッドシリーズ」で建築された工場です。防火性・意匠性に優れた外壁材を使用しており、低価格でコストパフォーマンスの良い建築に。内部は移動型クレーン付きの設計で、作業機械や材料などが移動しやすいレイアウトになっています。窓を多くすることで、換気性の良さや気温の調整しやすさを実現した建物です。
施工事例の概要
コアシス建築のCore-Sys建築も、柱スパンは最大で60メートルです。クレーン付きや2階建ても可能で、設計の自由度にアドバンテージがあります。また、コスト面でも在来鉄骨建築に比べて2/3程度に抑えられます。設計とコスト低減で、目的に適した工場の建築ができるでしょう。
株式会社コアは、千葉県に本社を構える、20年近い歴史を有したシステム建築会社です。システム建築大手・横河システム建築のyess建築ビルダーであり、「yess建築 関西ブロックビルダー総会」において平成25年度から30年度まで連続で「アクティブビルダー賞」を受賞している実績を持っています。
横河システム建築のyess建築を発展させ、大きい空間や柱のない無柱空間においてより適合した「コアシス建築」を掲げ、高品質・低コスト・短工期を目指しています。
建物を構成する部材の仕様や検討事項が標準に合わせて整えられたことにより、お客様へのご提案から設計・生産・施工までをすべて建築生産プロセス化・省力化しています。工場では必須の遮音機能のある外壁材を壁と屋根に使用。そのため、静かな室内環境を維持でき、騒音などの問題も起きません。コンピュータによりシステム化された設計・組立・施工を行うので、コストパフォーマンスが高いことも特徴です。
ニーズに合わせた見積もりが迅速にできます。ライン生産システムによる高品質を実現。設計と生産を徹底的に合理化・システム化しているため、低コストに抑えられます。耐久性が高く、気候変動にも対応可能です。
シンプルかつ機能性を重視したデザインのため、ほかの工法に比べ自由が利かない点がデメリットです。
木材を使用した土台と柱、梁などで建物を組み立てる工法のことを指します。「木造軸組工法」とも呼ばれ、日本に伝わる伝統的な工法です。柱の長さ・位置を自由に設定できるため、デザインや間取りに融通が利きます。また、窓やドアなどの開口部も自由に作れるので、工場の環境を良くする工夫が可能。木材同士の接合に補強金属が採用されるようになったため、建物の強度・耐震性能も向上しています。
間取りが自由であること、広い窓が作れるなど工場内に光を取り込むことができます。また、デザインを比較的自由に求めることができるので、用途により素材・形状を選ぶことが可能。耐久性も自分好みに設定できます。
一品生産かつ工期が長いためどうしても価格がほかの工法よりも高くなってしまいます。また、工期も条件によりばらつきはありますが一番長いです。基本5~6ヶ月かかると考えてください。
テント工場は、骨組みに合わせてシートを張るシンプルな工法によって建てられる工場です。耐用年数は短いですが、工期が短く低コストのため、短期の使用に有効な工法。倉庫としてよく使われる工法ですが、業種によっては工場としても使用することができます。
簡単な造りになっているので、短工期・低コストです。明るい色の生地は太陽光をある程度通すため、日中は照明がなくても明るく、晴れていれば冬でも温かくなります。建築確認申請の認定が早いのも特徴です。
耐用年数が6~10年程度と短め。強度も他の工法と比べると弱いため、天井クレーンなどの設置は難しいでしょう。夏は倉庫内が非常に暑いので、長時間の作業には向きません。
工場であらかじめ生産した部材を建築現場で組み立てる工法の総称です。あらかじめ柱、梁、床、壁パネルといった部分を生産・加工することで建築現場での作業を短縮します。価格や品質が安定しているのもプレハブ工法の特徴です。最近では、工場では必須の強度・防音・防寒などの面も改善されています。
あらかじめ準備された建物のパーツを組み立てるので短工期です。また、パーツのストックができるので低コストを実現。 低コストですが建物の寿命も約20年と長いこともメリットといえます。
規格に合わせて組み立てるため、設計やデザインの自由度は低いです。外壁の耐久性は高いですが、屋根材の耐久性は低いこともデメリットといえるでしょう。
工場を建設する場合、工法や施工事例を調べることももちろん大切ですが、他にも重視すべきポイントがあります。ここでは、工場建築の重要ポイントについてまとめました。
敷地の広さや使用する機械の大きさ、作業スペースなどを考慮して、生産効率の高い工場を建てることが重要です。狭い敷地に小さな工場を建設した場合、機械のスペースが大きすぎて余裕の無い作業環境になります。作業員がスムーズに動けないため、怪我のリスクが高くなり効率が低下するケースも。なるべく動きやすいレイアウトにすることで、生産効率を高めることができるでしょう。
また、扱う品目が増えることを想定するなら、将来的に増える機械やレイアウトの変更も考え、拡張性の高い工場を建築する必要があります。ただし広ければいいというわけではなく、複数台の機械を置くことで発生する振動や音を考慮しなくてはいけません。レイアウトと広さのバランスが整った工場を作ることが重要なのです。
機械の設置以外にも作業環境ということを踏まえた工場建設を行なうことで、作業員の満足度が上がり生産性を上げられるでしょう。快適と感じる環境は人それぞれですが、一般的に作業環境は安定した気温・湿度や静かさ、整ったレイアウトで建設することが推奨されています。
検査や検品を行なう方はより集中力を必要とするので、他部署から生じる騒音の対策も必要です。従業員の仕事の精度を落とさないためにも、作業環境を重視した建築を実施しましょう。
工場は作業環境の重視だけでなく、近隣環境への配慮にも気を配らなくてはいけません。騒音対策・環境への取り組みを徹底することで、周囲からのイメージアップにつながります。
たとえば外観一つとっても、美しい外観なら地域住民からの印象も良くなるでしょう。対して外壁や敷地がボロボロな工場は、トラブルが起こっていなくても悪い印象を抱かれやすいものです。
地域住民との軋轢を生まないためにも、工場建設の際は工場の景観や将来的な外壁塗装なども想定しておくのがベスト。初期費用だけでなくランニングコストも想定した建築をすることで、長期的な費用を抑えられます。今後の運用も考えたうえで、工場を建設してください。
工場を建てる際に押さえておくべき「生産効率の向上」「作業環境の快適化」「近隣環境への対策」を踏まえて、自社の工場をより満足できる建物にできる建築方法を選びましょう。
工場の建設を進める上で、周囲に迷惑がかからないように、防音対策もしっかり行いたいところ。以下のリンクでは、法人向けの防音材メーカーを紹介しているので、参考にしてみてください。
周辺の環境保全を目的に、国や都道府県、市町村への届け出が義務付けられています。
施行令第1条では、製造業や電気・ガス・熱供給事業者が対象だと定義。
第2条では、「敷地面積9,000m2以上」「建築面積3,000m2以上」とされています。
また届出からの90日は、都道府県知事や市町からの許可がない限り、着工できません。
1998年の京都議定書を受けて定められたのが、「地球温暖化対策推進法」。工場で排出された温室効果ガスの量を国に報告することで、日本全体の排出量の増減を確認できます。
工場で排出する温室効果ガスが原油か、それ以外かによって、対象となる事業者が異なります。
平成21年度以降、1年間の原油換算エネルギー使用量の合計が1,500klを超える工場は、排出した温室効果ガスの量を国に報告。
二酸化炭素やメタンといった、原油以外の温室効果ガスを排出している工場の場合は、排出量が二酸化炭素換算で3,000トン以上の事業者も報告が必要です。
工場の業種によっては、公害を引き起こす可能性があります。公害を防ぐために、有害物質や騒音・振動などを発生させる施設では、公害防止組織法が適用。管理者を中心とした組織内の整備と、知事または市長への届け出が義務付けられています。
工場長をはじめとした施設全体を束ねるポジションであれば、「公害防止統括者」として、組織整備を行なう必要があります。資格は不要です。一方、統括者のもとで補佐や点検・検査などを行なう「公害防止主任管理者」や「公害防止管理者」は、資格が必要になります。
管理者に必要な資格は、工場で排出される量や発生の可能性のある公害ごとに異なります。全部で14種類。大気関係と水質関係はそれぞれ4種ずつ、そのほか粉じん関係や騒音・振動関係、ダイオキシン類関係などがあります。
天井走行クレーン付き、間口21m・奥行56mの室内無柱構造の倉庫です。短工期・低コストが叶えられるスーパーラピッドを採用しています。外壁はVリブウォール、屋根や庇の軒先の化粧パネルを使用。どれも専用工場で生産される鉄骨や外装材なので、部品点数が少なく短期間で施工が完了します。また、無柱構造でありながら2.8tのクレーンを設置できるのも、システム建築の良いところです。
幅30m・奥行20mの2階建て工場。1階は奥行方向20mで、中央に2階床を支える柱を設けており、2階の事務所は室内無柱構造となっています。外壁や庇、フロントサッシやシャッターなど全てyess建築仕様で、部材点数を最小限に抑えているため、複雑なつくりであっても建物完成までが非常に早いのが魅力です。
白と黒のモノトーンカラーを外壁を用いて、シンプルかつシックにまとめた工場です。多雪地域にあるため、屋根はSSルーフに高断熱のYマットSを採用。雪が自然落下するよう、低軒側の軒先には樋を設けず、屋根を65cm張り出しています。腰壁高も高く設定し、降雪にも備えられるよう工夫されています。事務所のフロントサッシはオーダー仕様の寸法ですが、建物全体としてはスーパーラピッドのモジュール寸法となっています。
総面積7,685mのベアリング製造工場。ホワイトとブルーを基調とした、清潔感のあふれる外観が目を引きます。また、建物の高い位置に窓をいくつも設けることで採光性を高め、日中は電気を点けなくても明るい空間に仕上がりました。搬入口には大開口と庇を設置。スムーズな荷物の出し入れを可能としています。
熊本県阿蘇郡に建てられた、総面積2,152mの豆腐製造です。基礎・杭・柱を一体化させた基礎工法を採用し、低コストかつ短工期で開放的な工場を実現しています。また、耐震性にも優れており、(財)日本建築総合試験所の建築技術性能証明を取得しています。掘削土量が少なく残土処理も最小化できるので、環境への負担も抑えられた、思いやりのある建物です。
参照元:経済産業省:工場立地法
実績や、サポート力のあるプラントエンジニアリングに工場設備のメンテナンスや製造まで依頼しませんか?
下記の外部サイトではおすすめのプラントエンジニアリングを紹介しています。